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スリランカ 世界遺産の街のペラヘラ(行列)祭り

皆さんはスリランカと聞くと何をイメージするだろうか。旧国名が「セイロン」だけにセイロンティー、はたまたブルーサファイヤが有名な宝石の国、単に世界地図を思い浮かべて「インドの隣の小さな島」。
実はスリランカは「上座部仏教の聖地」である。
そしてこの国は「上座部仏教の聖地」であるだけでなく、世界有数の観光の国なのだ。世界遺産に指定されている場所が7ヶ所。「聖地アヌラーダブラ」「古代都市ボロンナルワー」「古代都市シーギリア」「聖地キャンディ」「ゴール旧市街とその要塞群」「ダンブッラの黄金寺院」が文化遺産に、「シンハラジャ森林保護区」が自然遺産に登録されている。

今回、「聖地キャンディのペラヘラ祭り、最も盛り上がる最終日」を観る機会を得た。
古都キャンディは、19世紀初めにイギリスによってシンハラ王朝が滅ぼされるまでの223年の間、最後の都があったところで、ここには「仏陀の歯」が納められた仏歯寺(ダラダ・マリガーワ)がある。仏陀の歯は4世紀ごろスリランカに運ばれ、最初は都があったアヌラーダブラに安置されたが、権力者の象徴として遷都のたびに移されキャンディには16世紀終わりごろに来たと伝えられている。
そして年に一度だけこの仏陀の歯が納められた仏舎利器が象の背中に載せられてキャンディの街を行進するのが「ペラヘラ祭り」だ。ペラヘラとは「行列、行進」を意味する。ペラヘラ自体はスリランカの宗教行事として各地で行われるが、シンハラ暦のエサラ月(7月〜8月)の新月から満月までの約2週間(行列はそのうち10日間ほど)行われるキャンディの祭りが最大規模であり一番有名である。

すっかり日が落ちたころ、あたり一帯に響く花火の合図で「ペラヘラ祭り最終日」のペラヘラ(行列、行進)が始まった。
キャンディアン・ダンスの踊り手、太鼓隊、音楽隊、道化師、軽業師、旧領主や役人のグループ、鞭使い、松明持ちや旗持ちなど、全てが中世の衣装に身を包み電飾で派手に飾られた象とともに練り歩くのだ。目の前に松明の火の粉が降ってくる。炎の熱気に演者も観客たちも次第に興奮していくのがわかる。トランス状態(神がかり)に入ってしまった踊り手も多く、視線がイッちゃっている。視覚と聴覚を刺激されてこちらまでおかしくなりそうだ。
ひときわ辺りが騒然となり、カメラを持った観光客が思わず立ち上がって一心不乱にシャッターを押すのは、仏陀の歯を納めた仏舎利器を背中に載せて堂々と歩いてくる仏歯寺の象が登場する瞬間である。ふと見ると沿道では地元の人々が一心不乱に祈りを捧げている。

こうしてスタートから終了までの3時間、ただただ目の前で繰り広げられる「ペラヘラ(行列、行進)」のスペクタクル・ショーに目を奪われ心も奪われて、あっという間に時間が過ぎてしまった。
ホテルに戻ったあとも、祭りの後の寂しさはあまりなく、深夜まで興奮は冷めやらなかった。


(写真左)イッちゃってる踊り手たち

(写真右)仏陀の歯を背に乗せ行進する象
     ニシャンタ・ティラカ・クマーラ撮影

文・写真: 城戸可路  (スリランカ・キャンディ 2008年8月)