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お釈迦様が訪れた場所で仏教徒の祈りを聴く

スリランカ・キャラニヤ
『お釈迦様が訪れた場所で仏教徒の祈りを聴く』
文・写真 城戸可路

 インド洋に浮かぶ島国スリランカ。コロンボから北東に約10キロ弱の距離にあるキャラニヤ(Kelaniya)という街で敬虔な仏教徒が多いスリランカならではの光景に出会った。
 お釈迦様はスリランカを3度訪れたといわれているが、そのひとつがここキャラニヤである。この街にある寺院の名前は「ラジャ・マハー・ヴィハーラ」。
地名からキャラニヤ寺院とも呼ばれている。
 この寺院の横にはキャラニ河が流れていて沐浴場もある。水の恩恵を受けた緑豊かな美しい街というのが第一印象だろうか。駐車場から寺の敷地へ通じる参道には花を売る屋台スタンドがならんでいて、国花の青いスイレンの花などが売られている。私が到着したのは日没時だったが参拝客は思いのほか多い。女子学生の集団や家族連れ、デート中らしいカップルなどが境内入り口で靴を脱いで裸足になり、ゆっくりと歩いていく。スリランカのお寺では靴と帽子を脱ぐ決まりがある。日差しが強い時間帯は足元が熱くて難儀するが、夕方なら裸足に石の階段や砂地が心地よい。
 仏塔の周りを歩きながら、手を合わせて祈りの言葉をつぶやく人、地面に座って一心に祈る人、少し離れて周囲の木々の下で語らう人など様々な姿がある。
本堂に近づくと入り口から太鼓のサウンドが響いている。これはダウラと呼ばれる太鼓を中心に数種の太鼓で演奏されるもので、スリランカの寺院では通常1日3回演奏される。参拝者はこの太鼓の音を聴いて儀式が始まることを知るだけでなく、その音色は厄除けであり幸運をもたらすとも言われている。太鼓のサウンドが鳴り響く中を本堂に入ると、薄暗いホールの壁と天井一面に描かれた鮮やかなフレスコ画に圧倒される。右手には涅槃仏が横たわる部屋があり、信者がここでも床に座り込んで祈っている。ホールの奥には黄金色の仏像が座しており、ここにも信者の姿があった。
そして圧巻はホールから見て左側の部屋である。壁全面にお釈迦様の物語が描かれている。釈迦がスリランカを訪れた3度の様子をリアルに描いているのだそうだ。
 こうしたお釈迦様の物語を見て外に出ると、本堂の隣にある菩提樹の周りではやはり敬虔な信者たちが祈りを続けている。手に水かめを持った若い娘たちが凛とした美しい姿勢で菩提樹の周囲を巡り、最後に菩提樹の根に水を捧げる。
 老いも若きも誰しもがお経だろうか、何か言葉を唱えている。その唸るような音の響きと、スリランカの宗教音楽(仏教寺院の伝統儀式音楽)のリズムが重ね合わさってこの神聖な場所に不可思議な奇跡の力を与えているようにも感じた。

(写真左)お釈迦様の姿におののく先住民たち
(写真右)菩提樹の周囲で一心に祈る人々

文・写真: 城戸可路 (スリランカ・キャラニヤ)