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欠かせぬ日課

インドネシアのバリ島では激しい雨さえ降らなければ夕刻5時になると、まるで判を押したように正確にどこからともなく男たちが村の広場に集まって来る。その中の幾人は鶏をまるでわが子の様に大事に抱えている。
これから男たちに欠かせない日課である闘鶏がはじまるのだ。
胴元が声を張り上げ賭け金を募っていく。

闘鶏は、タイ、フィリピン、カンボジア、インドネシアなど東南アジアの国々のあいだでは何世紀前から行われていた男たちの行事(?)なのだ。だがタイ、カンボジア、ラオスなどは仏教国なので、たとえ鶏といえども、仏の教えに従い不殺生を好まない。しかし、他宗教国であるフィリピン、インドネシアは残酷で必ず血を見る。互いの闘鶏の足に鋭いナイフをしっかりと結びつけ戦わせる。これには、代金をもらいナイフを貸す人、それを闘鶏に巻き縛り付ける人と役目が別れている。

睨みあっていた闘鶏は飛び上がり、相手の頚動脈を一瞬のうちにザクッとやる。負けた鳥は勝った相手のものになるが、その場で熱湯に漬けられ羽をむしり取られ、これも一瞬の内に解体され鶏肉となり売られる。これらの闘鶏は、飼い主が高価な輸入品の精力剤を毎日飲ませ丹精に育て試合に挑む。彼らにとって、それは何にもまして大切なことなのだと言っても大袈裟ではない。その闘鶏が一瞬の内に葬られたときの飼い主、いや、育ての親は、無念さと照れが入り混じったような顔をするが、それもつかの間のことで、数分後にはもう次の試合の賭け金を振り回し絶叫している。

中には警察官などの公務員、学校の教師、ビジネスマンなども多くいる。「何故、彼らは毎日夕刻5時に集まって来れるのだろうか」と不思議に思うのは、異国人である我々だけなのかも知れない。それでも会社の帰りに飲み屋に立ち寄り、くだをまいているよりは、よほど明るく楽しいのではないだろうか。

写真・文 : Mac